日本各地で個展を開催している星先こずえさん
2歳の時に自閉症と診断された。
洋画家である城戸佐和子に師事し、「切り絵作家」として活動を始めた。
こずえさんの作品は、クレヨンと絵の具でカラフルに彩色した
自作の和紙を使用して、障害の壁を超越した創造力豊かな世界を
魅力的に表現しているのが、特徴です。
最近では、素材として古布も使用し今までにないインパクトが
感じられる作品になっています。
このような作品を作れるようになるまで、こずえさんに寄り添った
母薫さんが記録した奇跡の成長記録(純粋な癒しの時間)をご紹介します。
高潔な人たち
恵子が中学2年生の頃に、私は自閉症の勉強会に参加した。
川崎医療福祉大学教授の佐々木正美先生のお話を聞いた。
そして、こんなことを学んだ。
自閉症の生活レベルでの特徴については、
- 呼びかけても振り返らない
- パニックを起こす
- 自傷行為がある
ということで、幼い頃の恵子そのものだ。
診断的意義を持つ行動としては、
- 社会的相互作用の障害
- 興味や関心の限局(興味の幅が狭い)
- 創造力の障害(相手が何を考えているか想像することができない)
その他の特徴としては、
- 見える物への親和性が大きい(文字や絵が好き。話言葉は見えないから苦手)
- 自立的な活動を好む。独りで遊ぶのが好き
- 習慣性・日課を好む。スケジュールを立てていると安心する
- 悪意のない自己中心性。意地悪をしないし、できない。お世辞も言わない
恵子は毎年、驚異的に成長しているとはいえ、自閉症の特徴をそのまま持っていた。
その頃初めて、高機能自閉症というグループがあることを知った。
学校の勉強ができる能力はあるのに、社会的な面で自閉症の障害を持っている人たちのことである。
その時に聞いた具体的な様子は、次のようなものである。
- 回りくどく、ペタンティックな(知っていることをひけらかすような)会話
(例 今日の天気は良好ですね) - 話題がわかりにくい。前提の説明抜きに話す
- 電話や訪問者への反応が、特に自分中心である
- 不器用で、それを本人は自覚している
- 社会的規範の理解不足のために、無邪気に他人を傷つける
- 屁理屈になりがちなので、議論はなるべくさける
- 他者からのからかいや軽蔑に対して、極めて敏感である
- 休憩時間、昼食時間がストレスフルな時間であることを理解する
すべて、当時の恵子そのものだった。
誰かが私に「恵子ちゃんに会ったよ。」と言えば
内容も聞かないで、「あら、ごめんなさいねぇ。」と先にお詫びを言った。
恵子が相手に失礼なことを言ったのは、ほぼ間違いなかった。
「おばさん、シミ増えたね。」と言われた、などと聞いた時には謝りながら大笑いした。
親しい友人は笑顔で教えてくれるけど、不愉快に思った人はたくさんいただろう。
いつも人に頭を下げていたけれど、腹の中では恵子の素晴らしさに自信満々だった。
あれほど高潔な人たちはいない。正直で、裏表なく、誰にも平等で、純粋、
悪意というものとはほど遠い。
私たちが考えつかない発想で、毎日楽しませてくれる。
なによりも、私を癒してくれる最高の娘だ!
恵子はとりあえず、高機能自閉症の段階までたどりついた、と私は思った。
自分の身近に自閉症の子供がいなくて、また症状についても全く知らなかったら
不愉快な思いをするだろう。
自閉症の子供を持った親としても、子供の口をふさぐことはできない。
不愉快な思いをした人には、謝るしかないが
恵子さんが自閉症とわかってからの毎日のお母さんの関わりを知ったら
逆に、頭が下がる思いがするのではないだろうか。
まとめ
恵子さんのお母さんの素晴らしいところは、毎日の努力もさることながら
知らない事について「学ぶ」という姿勢だ。
正しい知識を得て、問題解決の糸口を見つけ実行する。失敗だったら
失敗の原因を考え、解決策を見つけては再び実行を繰り返す。
まさに、恵子さんへの母の愛情そのものだと思う。
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