日本各地で個展を開催している星先こずえさん
2歳の時に自閉症と診断された。
洋画家である城戸佐和子に師事し、「切り絵作家」として活動を始めた。
こずえさんの作品は、クレヨンと絵の具でカラフルに彩色した
自作の和紙を使用して、障害の壁を超越した創造力豊かな世界を
魅力的に表現しているのが、特徴です。
最近では、素材として古布も使用し今までにないインパクトが
感じられる作品になっています。
このような作品を作れるようになるまで、こずえさんに寄り添った
母薫さんが記録した奇跡の成長記録(文学を味わう)をご紹介します。
井上ひさしの『握手』
大学生になった現在も、恵子の図書館通いは続いている。
高校3年生の時には、いつも通っている図書館で
「走らないでください。」と注意を受けた。
ぴょんぴょんとした独特の歩き方ではなく、普通の人みたいに「歩ける」ようになったなぁと
思っていたのに、である。
知らない人から見ると、走っているようにも見えるのかと思うと、
なんだかおかしくなって、私は、ケラケラ笑ってしまった。
恵子は横で、「私は、走ってません。」と訴えていた。
変な親子に違いないけれど、私の笑いにつられて係の人も微笑んでくれた。
ともかく、図書館には本当にお世話になった。
恵子が大学2年生の春。
長女がが自宅近くの中学校で、、教師の資格を取るための教育実習に取り組んだ。
中学2年生の、国語の授業の実習だった。
教材は、井上ひさしの『握手』という短編だった。
恵子と長女と私の3人で、読みながら議論を交わした。情景を想像した。
最初の場面である「西洋料理店」とは、どんな雰囲気のレストランなのか。
登場するルロイ修道士と主人公は、どんな感じの人たちなのか。
私たちは、レストランの壁の色や着ている洋服まで想像した。
3人でそこで食事したことがあるかのように、イメージは一致する。
会話の言外にあって、伝えたいことは何か。それを話す時の人物の気持ち、
しぐさの意味など、掘り下げて議論した。
恵子は、長々と理屈は言わないけど、自分の意見をスパッと一言で表現する。
私たちは、「なるほど、恵子らしい意見だ。」と納得する。
その上で、教材が2年生には難しいので、どこまで生徒たちに求めればいいのか、
どういう表現をすれば生徒から意見が出やすいのかと話し合った。
3週間、長女の実習教材を肴にして3人で盛り上がった。
「結局、『人間の生き方』っていうことよね。」という結論が下された。
それぞれ朗読もしてみた。恵子の読み方は上手いというのではないが、とてもいい。
心に余計なものがないからだろう。長女と2人で認めざるを得なかった。
1年経っても恵子は、「あの時は、楽しかったなぁ。またお姉ちゃんと文学の話がしたい。」
と思いだしていた。
先日、「坂の上の雲」という蕎麦屋さんに行った。
恵子が「司馬遼太郎の作品の題名から、店の名前をつけたのかなぁ。」と言いながら入った。
はたして、その通りで、その小説が棚にに並んでいた。
恵子が手に取って、しばらく読んでから曰く。
「お母さん、名作は最初の数行でわかるよ。文章力というよりも、パワーというか
愛に溢れてるからね。」
普通児でも、本の内容について想像し、議論を交わすことができる子がいるだろうか。
自閉症の恵子さんが、自分の意見を言えるということは、それまでに読んだ莫大な量の本が
土台になっていることは、間違いない。
恵子さんの抜群の記憶力や集中力は、本当に素晴らしい授かった才能ですね。
まとめ
小さい時からの読み聞かせを始め、本好きになってたくさんの本を読むようになると
語彙力や思考力などさままざな力を楽しみながら、自然に身につけることができるのですね。
大学生になった恵子さんを、薫さんはどんな思いで見ているのでしょう。
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自閉症と2歳で診断された切り絵作家星先こずえさん・芸術を味わう楽しみ(中学校・大学)
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