自閉症と2歳で診断された切り絵作家星先こずえさん・長女の上手な絵と個性的な恵子の絵(小学6年生~高校)

自閉症、絵、姉妹 子育て
自閉症、絵、姉妹

日本各地で個展を開催している星先こずえさん

2歳の時に自閉症と診断された。

洋画家である城戸佐和子に師事し、「切り絵作家」として活動を始めた。

こずえさんの作品は、クレヨンと絵の具でカラフルに彩色した

自作の和紙を使用して、障害の壁を超越した創造力豊かな世界を

魅力的に表現しているのが、特徴です。

最近では、素材として古布も使用し今までにないインパクトが

感じられる作品になっています。

このような作品を作れるようになるまで、こずえさんに寄り添った

母薫さんが記録した奇跡の成長記録(上手な長女の絵と個性的な恵子の絵)をご紹介します。

絵のインパクト

恵子の絵には、インパクトがある。

上手い下手という表現とは違うパワーがある。

小学生も終わりに近くなり、送別会の責任者だった私は『花のまわりで』と言う曲を

みんなで歌うことにした。

その歌詞を模造紙に書き、恵子に

「隙間に、花の絵を描いてちょうだい。」と頼んだ。

恵子は、それを持って出かけるまでの2時間ほどの間、丁寧に描いてくれた。

送別会も無事終わって帰宅すると、恵子が「さっきの紙を出して。」と言う。

もう用済みの歌詞なんて、誰も見ることがないというのに、恵子はそれから

5~6時間かけて、さらに花を模造紙一面に散りばめた。そして満足した。

彼女は、本当に描くことが好きなんだと、私はその時実感する。

中学2年生の頃、小さい色紙をもらったことがあった。

片面が緑色に染まっていた。

恵子はそれを草むらに見立て、つくしんぼの絵を描いて、言葉を添えた。

「つくしんぼ、ちいさな身体に食そえて、役に立たない者はない。」

片面が水色に染めてある色紙には、それを空に見立てて、雲に乗る孫悟空の絵を描いた。

添えた言葉は、「青い空、子供の頃のあこがれは、白雲またがり空を舞う。」

中学3年生の時には、読書感想画コンクールd優秀賞を頂いた。

木暮正夫の『鬼たちの呪い』(岩波書店)という本の感想画だった。

グロテスクな鬼や妖怪の世界は、恵子の専門分野だ。

高校2年生から通い始めた絵の先生からは、高校3年生の夏休みに集中して

絵の勉強に行くよう勧められた。

自宅から離れ、2週間ほど独りで寮住まいをしながら絵の専門学校に通った。

携帯電話を購入し、毎朝、電話で起こした。

電話をかける時間がちょっとでも遅れると、「私、今忙しいんだから!」と怒られた。

次に、遅れた時には、すでに起きていて忙しい時間だからと思い、電話をかけないでいると

向こうからかかってきた。

「早くかけてこないと、気になるじゃないの!」とまた怒られた。

その2週間、母親にとっては、絵が上手くなることなんてどうでもよかった。

あの恵子が慣れない街で、独りでいきているという事実だけで感激だった。

ここだけの話だが、恵子の絵は、駄作も多い。

それに比べて長女は、いつもそつなく、誰が見ても抵抗を感じない上手い絵を描く。

高校時代の絵の先生から、「てっきり美大に行くと思ってました。」と言われた。

でも、本人には、そんな発想は全くなかった。

恵子の絵は、常に「恵子の絵」だった。

あの個性的なオーラと同じ土俵に立ち、競う意欲が、長女には最初からなかった。

でも、言えることが1つある。

「天才は努力の異名」という言葉を信じるなら、恵子が描く時間と同じ時間を

長女が費やしていれば、凄い絵を描くようになっていたに違いない。

普通の女の子たちが、友だちと付き合ったり、おしゃべりに費やす多くの時間が

恵子にはそのまま残されていた。

あと1つ、恵子には「なんとなく、ボーッと過ごす」という事が出来なかった。

自閉症の性で、常に何かをしていなければならなかった。

つまり、自由になる時間のほとんどが読書と絵に費やされた。

恵子の4コマ7漫画を見ながら、ある自閉症協会の会長さんが

「自閉症児が4コマ漫画を描くなんて信じられない。」と言われたことがある。

私は、「毎日描いてますから。」と言ったが腑に落ちないようだった。

あの筆圧のない不器用な恵子が、繊細な線が引けるようになり、自分を表現するようになるまでに

どれほど膨大な時間を費やしたか、想像できないだろうなぁ。

「精神集中して没頭できる」という才能を、授かったおかげである。

まさに、集中して没頭できる力があったから恵子さんの絵が誕生したわけです。

筆圧をつけるための努力、恵子さんもお母さんも二人の努力を一言で

表すことなどできません。

ある自閉症協会の会長さんは、それだけの努力をするお母さんに出会ったことが

なかったのですね

まとめ

起こしに行って「いやだ、いやだ!」と毎朝叫んでいた恵子さんが、

独りで寮生活ができること自体、凄いことだと思います。

たとえ2週間といっても、殆どお母さんとの関わりが深かっただけに

お母さんも心配だし、恵子さん自身もよく決心したと思います。

新しことに1歩踏み出すということは、不安を乗り越えるということなのですね。

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自閉症と2歳で診断された切り絵作家星先こずえさん・芸術を味わう楽しみ(中学校・大学)

 

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