自閉症と2歳で診断された切り絵作家星先こずえさん・自閉症は治るか?

子育て
自閉症、成長、治る

日本各地で個展を開催している星先こずえさん

2歳の時に自閉症と診断された。

洋画家である城戸佐和子に師事し、「切り絵作家」として活動を始めた。

こずえさんの作品は、クレヨンと絵の具でカラフルに彩色した

自作の和紙を使用して、障害の壁を超越した創造力豊かな世界を

魅力的に表現しているのが、特徴です。

最近では、素材として古布も使用し今までにないインパクトが

感じられる作品になっています。

このような作品を作れるようになるまで、こずえさんに寄り添った

母薫さんが記録した奇跡の成長記録(自閉症は治るか)をご紹介します。

終わりにかえて

時々、「自閉症は治るのですか?」と聞かれることがあります。

恵子がこれほど成長していながら、その返事には困ります。

認知症になりかかったお年寄りに「まだらぼけ」という言葉を使いますが、

成長しつつある恵子には「まだら成長」という表現がぴったりと合います。

自閉症という霧でおおわれた一面にぽつんぽつんと穴が開き、その向こう側の健常児の

世界が徐々に見えているような感覚で、彼女を眺めていました。

でも、人の性格がなかなか変わらないように、自閉症という「性格」は

ずっと持っています。

それらの欠点が目立たなくなり、マイナスに出ていた特質がプラスに

変じたりするようになりました。

いつも不機嫌で怒っていた人が時々機嫌が悪いという程度になり、手足の不器用さは

目立たなくなりました。

話す言葉はまだ少し聞きづらく、決まった時間に決まった行動をとる性格は

「真面目な女子大生」へと変身しました。

睡眠障害で夜まで動き回っていた体力によって、つかれてもするべきことは

さっさとする、という勤勉さが維持されています。

有難いことに、気の合う友達もできました。

でも、付き合う時間は少ないので、その分相変わらずの読書家です。

恵子は、驚異的な成長をとげましたが、思いがけず、ある日突然ステップアップした

ということではありません。

すべて、1歩1歩、次の1歩1歩、また1歩1歩。

歩き続けた1歩ごとに、恵子は私を喜ばせてくれました。

まったくできなかったことが、普通の子のようにできるようになるということは

まさに歓喜です。

運動会では、列に並んで立っているだけでも、嬉しかったものです。

寄り道ができなかった恵子が、大学生になる春には、

長女とウィンドショッピングを、楽しめるようになっていました。

人ごみの中でいつも目立っていた恵子を、今は探さなくてはいけません。

幼い頃には、すぐ行方不明になり、探すのは大変でしたが大勢の中にいる時は

動き方が独特なので、恵子をすぐに見つけることができたものです。

障害児の親にとって、「我が子が目立たなくなる」というのは嬉しいことです。

最近では、待ち合わせをする恵子を人ごみの中から探す時に、

私は、ひそかに幸福感を味わいます。

そればかりか、人の思いを察することができなかった恵子の、

感じる力や表現する力には驚嘆してしまいます。

聞く力が弱かった恵子が、電話してきた人の人間性を見抜くのですから。

文章を読んで、感じる力。絵を見て感じる力。音楽を聴いて感じる力・・・・。

「自閉症が治るか?」という質問には、簡単に答えられません。

でも、「自閉症も確実に成長する」ということだけは言えます。

障害児を育てるのに、転勤族の私は不安とストレスでいっぱいでした。

でも、恵子にとっては、2歳年上の姉がよい見本になってくれて助かりました。

障害児がいても働かなくてはいけないお母さんもおられるし、

あるいは、働いていた方が気晴らしになってよいこともあります。

しかし、私の場合は、専業主婦であったことで、気力・体力を維持することができました。

その点は、主人に感謝です。

「母親としてベストをつくしたい。」という思いがスタートであり、すべてでした。

障害児がいる家庭も健常児がいる家庭も事情はさまざまでしょうが、

それぞれの親子が、それぞれの1歩に向かって歩まれることを願い、

この手記を終わらせて頂きます。

長い年月、私たち親子を皆さんの温かいまなざしで包んで頂き、感謝いたします。

 

現在、女子大生の恵子さん。

見た目では、自閉症だとわからない状態にまで成長した恵子さんを赤ちゃんの頃から

試行錯誤しながら、その時の恵子さんに1歩は何かを考えて努力、出来るようになったら

次の目標を設定して1歩1歩、歩んできたお母さんである薫さんの汗と涙の結晶です。

粘り強さと強い精神力、そして腹は煮えくり返っても笑顔で対応できるしたたかさも

理解のない人たちと接するには、必要な要素かもしれませんね。

まとめ

「自閉症」が治ったという話は、聞いたことがない。

でも、障害があるとわかった時から、働きかけを毎日欠かさず続けることで

普通児ができることを、1つでも多くできるようにすることができるとわかってきた。

毎日毎日が、戦争のような日々が続くので、精神的にもストレスが溜まり大変です。

普通児の子育てとは、違う苦労がある分、違う喜びもあるのですね。

 

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