日本各地で個展を開催している星先こずえさん
2歳の時に自閉症と診断された。
洋画家である城戸佐和子に師事し、「切り絵作家」として活動を始めた。
こずえさんの作品は、クレヨンと絵の具でカラフルに彩色した
自作の和紙を使用して、障害の壁を超越した創造力豊かな世界を
魅力的に表現しているのが、特徴です。
最近では、素材として古布も使用し今までにないインパクトが
感じられる作品になっています。
このような作品を作れるようになるまで、こずえさんに寄り添った
母薫さんが記録した奇跡の成長記録(くよくよしている暇はない)をご紹介します。
子育ては親育て
小学校の勉強についていけないことは、気にしなかった。
気にできる段階でもなかった。
でも時計の読み方は、覚えないと困るだろうと考えた。
いつものように、手書きの問題で練習させた。
1枚の紙に時計の絵を6個描き、その下に「〇じ〇ふん」と、数字だけ記入すればいいようにした。
簡単な読み方から始め、半年ほどかけてだんだんと難しい読み方まで覚えさせた。
初めは、3時や4時ちょうどをたくさんさせる。
次に3時15分や4時30分、5時45分など。最後には、18分、47分とかになる。
スモールステップで、嫌がれば少しもどるという繰り返し。
時計と関係ない数字を口にする時にも 「ふん」をつけるようになっておかしかった。
時計に関しては、学校の担任の先生にも手伝ってもらった。
毎日、私が時計の絵で問題を作り、恵子に答えを書かせる。
それを学校に持たせて、先生に丸をつけてもらった。
日々の親子の取り組みを、知って欲しかったからだ。
先生は、喜んで手伝ってくださった。
落ち着きのある、温かい先生だった。でもその先生から、ある日、指を折りながら
「恵子さんはこれと、これと、これができません。」と言われた。
先生が要求されることは、恵子の次の1歩ではなかった。
私はにこやかな笑顔で、
「それを、今の恵子に要求したら学校に来られなくなります。」と反論した。
先生は、すぐに「そうでしょうねぇ。」と答えてくださった。
私たち障害児の親は、いろいろな助言を受ける。
子供にちょうどではない要求があったとしても、それでくよくよ悩んではいられなかった。
私が落ち込んでいては、嫌がる恵子に何もさせてあげられない。
反対に、やり過ぎだと注意されたこともある。
幼稚園時代に、療育相談の先生から「数字の練習は、まだ早すきます。
ボタンをはめるなどの、生活上の練習をさせてください。」と言われた。
私は、数字がきちんと書けるようになれば、ボタンもはめられるようになると思っていたが
専門家には、反論は無駄だと察した。
この時は、「はい、わかりました。」と素直に返事し、以後そういう話は一切しなかった。
でも、絵本の読み聞かせは差し障りがないから、その取り組みはせっせとアピールした。
「一生懸命なお母さん」は喜ばれるが、「熱心すぎて困る保護者」というレッテルを
貼られないようにして、気持ちよく相手から情報をいただくことにした。
言えばわかってもらえそうな人には、積極的に自分の意見を述べた。
そうでない人に対しては、眉間にしわをよせて訴え、後で自分を疲れさせることがないようにした。
恵子の周りにはいつもいい人ばかり、というわけではない。
また、母親では守ってあげられず「頑張れ、恵子ちゃん。」と、心の中で声援を
送ることだけしかできない時もある。
恵子の周りの環境に、声を荒立てて文句をつける気力は、私にはなかった。
ただ、私たち親子の味方をできるだけ増やすこと。
そして今日1日、自分たちができることに確実に取り組むこと。
それだけで手一杯だった。
振り返れば、娘の成長という目的のために、私は自分をずいぶんコントロールしてきたことになる。
私の血液型は、A型で本来は気が小さくて、他人の思惑をとても気にする性分だというのに。
「子育ては親育て」とは、私のための言葉だ。
「子育ては、親育て」「子育ては、個育て」
親は、子供を授かることで子育てが始まる。
子供一人一人、子供の数だけ子育ての数がある。
親は子供に良かれと思って、試行錯誤しながら子供をそだてる。
障害がある、無しに関わらず、親は子供を育てることで親として成長していくのだと思う。
まとめ
子供の教育方針を心に1本の太い柱を持つお母さんは、専門家の意見を聞く耳を持たず
自分が得た情報だけで判断することが多い。
また、専門家も知識だけで、子育てしているお母さんの考えを理解しないことも多い。
障害児を育てることは、一律に同じではない。専門家の知識が、全部合ってるとは限らない。
子供の教育に22年関わった私から見ると
お母さんは教育方針を持っていても、その自分のやり方が100%正しいと思ったら
そのお母さんの成長は無いと思っている。
お母さんが集めた情報は、やはり素人考えだからだ。
専門家の意見に従う必要はないが、参考として聞く耳を持つことは大切だと思う。
また、専門家として心がけなければいけないのは、まずはお母さんの考えを聞いてあげる事。
知識を押し付けるのではなく、お母さんの気持ちを受け止めた柔軟な態度だと思う。
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