日本各地で個展を開催している星先こずえさん
2歳の時に自閉症と診断された。
洋画家である城戸佐和子に師事し、「切り絵作家」として活動を始めた。
こずえさんの作品は、クレヨンと絵の具でカラフルに彩色した
自作の和紙を使用して、障害の壁を超越した創造力豊かな世界を
魅力的に表現しているのが、特徴です。
最近では、素材として古布も使用し今までにないインパクトが
感じられる作品になっています。
このような作品を作れるようになるまで、こずえさんに寄り添った
母薫さんが記録した奇跡の成長記録(読み聞かせから一人読みへ)をご紹介します。
読める子にする!
ある講演で、1冊の本を紹介された。
ドロシー・バトラー著『クシュラの奇跡 140冊の絵本と日々』(のら書店)
という本だった。
病気で寝たきりの娘に、家族じゅうで本の読み聞かせを続けて
歩けるようにまでなった実践の記録だ。私の座右の書になった。
恵子は、私が指さしたところを見てくれなかった。
「あいうえおの表」も見てくれない。
幼児向けテレビ番組「ひらけ!ポンキッキ」で「あいうえおの歌」が流れていた。
幼稚園への送り迎えの時、自転車の後ろに恵子を乗せて、
私は、「あいうえおの歌」を歌い続けた。
数か月間、全く聞いていないように見えた。
でも、ある日突然、彼女は私に合わせて歌い出した。
自転車をこぎながら、私は涙が止まらなかった。
それからは、「あいうえおの表」を指さしながら
一緒に「あいうえおの歌」を歌えるようになった。
恵子には、幼稚園年長の夏休みになっても、絵本の読み聞かせができなかった。
彼女をひざに乗せて私が読みだすと、めちゃくちゃにページをめくり始める。
教育相談の先生が、「こういう子どもにとっては、読み聞かせもたいへん集中力が
いることなんです。」と言われた。
恵子には、赤ちゃん程度の集中力しかないから
赤ちゃんの本から始めよう、と思いついた。
ディック・ブルーナの「うさこちゃん」シリーズ(福音館書店)には、
全く文字のない絵本があった。
私はこの本を広げ、読むというよりも絵を見ながら語りかけた。
そうすると、恵子は絵本をじっと見てくれた。
それから1字ずつ、字数を増やしていった。
そして、1行ずつ行数を増やしていった。
それでも、ある程度の文字数まで増えると、それ以上長い文章を
受けつけなくなった。
私は、公文の国語の音読教材を利用した。
恵子は、そのプリントを見てくれない。
でも、手書きの教材なら見てくれた。
私は、教材の絵と文字を教材と同じ大きさのトレーシングペーパーに
書き写して読み聞かせた。
小学校の入学が、目前にせまっている。
私は、読めるだけ読んだ。彼女が遊んでいる時にもその後ろで読んだ。
ある時、「おむすびころりん」のおじいさんのセリフを恵子が言った。
「どれ、おばあさんが作ったおむすびを食べようか」と。
いつの間にか、恵子は全文を覚えていた。
それからは、暗記している文章を口に出しながら、
その文字を目で追うという形で、恵子は文章が読めるようになった。
やがて、小学低学年の頃には、ひとり読みが出来るようになった。
私のやり方は、目で見て判断する力より耳で聞く力の弱い自閉症児に対しては
遠回りの方法だったかもしれない。
でも、恵子が読む力をつけたうえで、後年スムーズに会話ができるようになあった淵源は、
この時期の読み聞かせの量にあった気がする。
恵子さんが、全く興味をもたなくても耳から繰り返すことで
知らない間に、覚えていたんですね。
初めて恵子さんの口から「あいうえおの歌」が出てきたことで
薫さんにとって、自分のしたことへの確信になったと思います。
まとめ
自閉症児のように障害を持つ子供でも、時間はかかりますが
健常児よりも何倍、何百倍の働きかけることで、できるようになるのです。
この読み聞かせは、その後の恵子さんの成長に大きく影響を与えることにでしょう。
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