自閉症と2歳で診断された切り絵作家星先こずえさん・読みこなしたさまざまなジャンル

読み聞かせ、お勧めの本 子育て
読み聞かせ、お勧めの本 自閉症

日本各地で個展を開催している星先こずえさん

2歳の時に自閉症と診断された。

洋画家である城戸佐和子に師事し、「切り絵作家」として活動を始めた。

こずえさんの作品は、クレヨンと絵の具でカラフルに彩色した

自作の和紙を使用して、障害の壁を超越した創造力豊かな世界を

魅力的に表現しているのが、特徴です。

最近では、素材として古布も使用し今までにないインパクトが

感じられる作品になっています。

このような作品を作れるようになるまで、こずえさんに寄り添った

母薫さんが記録した奇跡の成長記録(読みこなしたさまざまなジャンル)をご紹介します。

恵子さんの読書遍歴

長女は一貫して純文学の世界を泳いでいたが、恵子はいろいろなジャンルを制覇していった。

小学2年生の7月、恵子と外を歩いていて猫に出会った。

「昨日読んだ『ネコとぼくのドキドキ日記』(いわままりこ作 教育画劇)に

出てくる猫に似てるね。あの猫の名前はなんだっけ?」と聞くと

「ネコのタケコだよ。」と教えてくれた。

サラリと返事したけど、読んだ本の内容を教えてくれた最初の出来事だった。

国語の授業でアーノルド・ローベルの『お手紙』を勉強した時のこと。

隣に住む西山ゆうちゃん(仮名)に渡してくれと、恵子から手紙を預けられた。

中には「しんあいなるゆうちゃん。わたしは、きみのしんゆうであることを

うれしくおもっています。きみのしんゆう けいこ ゆうちゃんへ」と書いてあった。

恵子の優しさが込められていて、感激した。

生活の中の出来事よりも、本の中での経験の方が恵子には影響があった。

3年生になると、雑多な本も読むようになった。

占いに関する本を読んでるうちに、自分も占い師になってしまい、

通りすがりの客(つまり家族)が来ないか、廊下に座ってじっと待っていた。

釣りに行けば、体をふくらませるフグを見て

「国語の教科書の『魚の身の守り方』(当時の『小学国語3上』教育出版)に

書いてあるとおりだ。」と納得していた。

恐竜や、妖怪関係も好きで、図鑑も良く眺めていた。

その流れで、中学1年生の夏休みの課題はミイラの研究だった。

薬草に凝った時期には、図書館から借りた本を片手に、家族もつきあわされて山を歩く。

すったり干したりしたのを、飲まされた。

私は、自分が気楽に読むためにと、小学生向けの日本史のシリーズを借りていた。

恵子は、それらを私よりも熟読するうちに歴史オタクになった。

天皇や武将の名前、その人生、家族構成、戦の様子は、

日本史の先生よりも詳しく知っているにちがいない。

中学校での日本史の試験は、いつも満点になった。

中学生になると、時代ものの小説が大好きになる。池波正太郎にはまった。

24巻もある「鬼平犯科帳」シリーズ(文藝春秋)の何巻にはどういう人物が

登場するのかを把握していた。

中学2年生の夏休みの研究課題は、実在の人物である鬼平こと「長谷川平蔵」を

研究して優秀賞を頂いた。

気に入ると、同じ作者の他の作品や、関連の書物を全部読んでいる。

また恵子は、『源氏物語』から『水滸伝』まで読みこなした。

切り絵の「宮田雅之の世界展」を見にいったことがある。

三国志や水滸伝の、優雅で力強い挿絵の作品がたくさんあった。

恵子は、それぞれの作品の人物や背景を解説するので、

会場を出た時には、声がかれていた。

推理小説も大好きである。赤川次郎、斎藤栄、横溝正史、有栖川有栖から

現実の検死捜査や法医学の本にまでのびていく。

まんがも見る。水木しげるの妖怪ものや、『サザエさん』『ブラック・ジャック』から

杉浦日向子、小林よしのりまで、個性の強い作品が好きだ。

最近では、ル・グヴィンの『ゲド戦記』(岩波書店)や宮城谷昌光の本を読みながら

池田あきこが描く猫のダヤンの世界を楽しんで、かつ教育関係の本を読む。

「お母さん、教育の話は奥が深くて面白いよ。」と。

高校時代、友達が数人で「オタク」と呼ばれる人たちの特徴を挙げた時

恵子は、その全部があてはまったそうだ。

でも、誰もそのことに気づいてくれずがっかりした、と本人は真面目に話していた。

恵子には、自閉症という障害があるからこそ、これだけ膨大な本を読みこなせたのだと思う。

またそれが、頭のにきちんと整理されて、いつでもさっと出てくるようなシステムになっていた。

最近になって、まったく逆のことが起こった。

恵子が私に、「ほらほら、あの作家だれだけ。イケ~・・・」と聞いてきた。

なんということか!

大好きな作家、池波正太郎の名前が恵子から出てこないとは信じられない。

あぁ、普通の人に近づいてきたなぁ、と感じた。

たくさんのことを覚えてくれたことも嬉しいし、それを忘れてくれるのも

また嬉しい。

 

読み聞かせを続けた結果、人並以上の記憶力を持つようになった恵子さん。

その凄さに驚きながらも、自閉症という障害児が普通児のように

忘れるということが起きた時の複雑な気持ち、両方の気持ちも嬉しいと感じることも

とても幸せなことですね。

まとめ

私の周りの自閉症という障害を持った子供も、恵子さんのように

読み聞かせを根気よく続けて、膨大な本を読むようになったら

出来ることがどんどん増えて、いくのではないでしょうか。

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自閉症と2歳で診断された切り絵作家星先こずえさん・不安だった赤ちゃんから幼児期

 

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